父のカツラ - ファミリープロミス    ほっ!と一息家族エピソード

メルマガ登録募集中!   メルマガ登録はこちらから

「家族の絆」メッセージや全国の活動の様子などをメールマガジンにて配信しています。
是非、お気軽にご登録ください。(個人情報はメルマガの配信のみに使用いたします)

2019年01月28日    ※イラストはイメージです

父のカツラ

012086.jpg 父が大事そうに箱を抱えて帰宅したあの夜の『騒動』は、今も鮮やに蘇るが、ちょっと心が痛む。「何が入ってるの」と聞いてもニヤニヤして答えない。中身を取り出した時、私と母は叫んだ。カツラだった。ヘラヘラ笑っている母娘をおいて父は隣室に消えた。

 数分後に現れた父を見て、母娘は抱腹絶倒。突然若返った父が立っていたのだ。笑いが収まった時私達は言った。「気持ち悪い」。父は残念そうにカツラを脱いだ。一瞬にして五十歳を目前にした父が戻った。「ダメか」と父が呟く。「今からカツラにしたら落差が大きすぎる」「一旦かぶったら、もう脱げないよ。帽子みたいなわけにはいかないよ」「社内旅行の時どうすんの」「風吹いても大丈夫?」。母と娘は言いたい放題。父はしぼんでしまった。

 父が人生でも最大と思える勇気を出して誂えた超高級カツラは、人目に触れることなく、頭に乗せたのは、後にも先にもその日の数分だけだった。人知れず禿げた頭を悩んでいたことを思い知らされた夜。笑い転げたことを後に悔やんだ。

 あれから40年余り。真白になったわずかの髪を、毎日いたわるようにときつけている。頭は顔に馴染み、年々いい顔になった。

 父はあのカツラをどこへやってしまったのだろう。あの日の照れた父、若返って現れた父を思い出す。今更詫びの言葉は言えないけれど、笑い飛ばして悪かった。その父は91歳を生きている。

(60代・女性)
posted by ファミリー・プロミス at 10:31 | 「ほっ!と一息家族」エピソード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
Copyright © ファミリープロミス    ほっ!と一息家族エピソード All Rights Reserved.
当サイトのテキストや画像等すべての転載転用・商用販売を固く禁じます
Designed by カエテンクロスSEOテンプレート