伝達式 - ファミリープロミス    ほっ!と一息家族エピソード

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2018年03月09日    ※イラストはイメージです

伝達式

 最近の母は、老い支度をゆっくりと進めているようだ。ある日、母が部屋に呼んだ。ベッドの上にワンピースが横たわっていた。「懐かしい〜!」と私は駆け寄った。紺色の縮緬素材で涼しげなワンピースは、母が祖母に買ったもの。晩年の祖母のお気に入りで、病院通いによく着ていた。

 明治女の祖母は、人生のほとんどが着物だったが、後半人生は洋服が多かった。しかし靴を履く事はなく、洋服でも足元は下駄や草履だった。アンバランスだが、祖母のそのファッションは愛嬌があり、違和感がなかった。話ずきで愛想がよくて、多くの人に好かれていた祖母。

 祖母のワンピースを手に取ると、鼻先に蘇ったのは、紛れもなく祖母の臭いだった。化粧も香水も無縁の祖母だが、不思議と何かしら時々ほのかに香った。祖母の髪は長く、病床に伏しても髪を束ね丸めた。不器用な祖母だが、髪を結うのは確かだった。祖母と香りが結びつくとしたら、洗髪に使っていた椿油だろうか。清々しい石鹸のような体臭だったのだろうか。生前に聞いておけばよかった。

819223.jpg 「そろそろ処分しようかと思って」と母が呟く。「草履もバッグもあるのよ、ほら」。驚いた。母はこれらをカビも生やさず、シミも作らずきれいに35年余り保管していたのだ。「処分しないで。私が持っておくから」と言うと、母は表情を崩し私に託した。本当はそれを頼みたかったのだろう。

 身辺整理をする母。親にとっても子にとっても寂しい季節だが、この小さな「伝達式」に、祖母が香りとなって参加していたことがちょっとうれしい。

(60代・女性)
posted by ファミリー・プロミス at 10:45 | 「ほっ!と一息家族」エピソード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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