
父がオセロを知ったのはデーサービスがきっかけだった。知るや否や早速オセロゲームを買うのに付き合わされた。以後、両親がオセロをする光景が数か月続く。
次第に父が腕を上げ、母は相手にならなくなり、私が相手に。父とオセロをする日が来るなんて未来図にはなかったことだが、何とも穏やかで優しい光景を享受できる日々が始まった。

携帯でこんなこともできるのか、と父は感心するやら感激するやら。その日から、父はコンピューターと対戦する日々なのだ。
今では旅先のホテルでもパソコンを見つけるとオセロゲームに挑戦。母も傍らで対戦を眺める。勿論、アナログオセロの持参も忘れず、私とは真剣勝負。最近は私の負けが多い。
携帯電話のオセロで遊んでいるから人待ちの時間なども苦にならなくなったという父。老いてやや不自由な父の手は今日もピッピと携帯キーを押している。
(60代女性)